1)著作物を他人に利用させるメリット

著作権は排他的独占権であるため、著作者はみずからその著作物を排他的に利用することができます(1-3-2.参照)。著作物を自由に複製したり翻案できるのは、著作者だけなのです(5-1.参照)。

しかし、著作物を世に広く知らしめたい場合や、経済的利益を得たい場合には、著作物を他人に利用させたほうがよいことがあるでしょう。たとえば、小説家はその小説を翻訳させたり、出版させることで金銭(いわゆる印税)を手にします。また、金銭的な利益とは関係なしに、著作物または著作者の知名度を上げたいと考えることがあるかもしれません。

これはつまり、どのようにして他人に自分の著作物を利用させれば、著作者自身の目的を達成できるのかということです。お金が欲しいなら権利放棄せずに、著作物を利用させる許諾を与えることの対価として金銭を受取るべきです。かりに耳目を集めることが目的なら、大手出版社から本を出版させるのがよいでしょう。

インターネット上で、趣味目的またはボランティア目的で著作物を配布する著作者もいます。著作権は放棄せずに、RSSリーダーやマウスジェスチャーソフトなど、有用なソフトを無料で配布しているのです。ウィキペディアも、自分の書いた文書が他人に改変されることを許諾したうえで、世界中の人が執筆に協力している無料の百科事典です。

2)他人の著作物を利用するメリット

他方、他人の創作した著作物を利用する者としても、メリットがあります。たとえば、人気アニメのキャラクターを使ったおもちゃを制作・販売することは、安定した売上げが期待できるでしょう。バンダイはこの手法を使って成長してきました(キャラクター・マーチャンダイジング)。出版社も、外部の人間が創作した作品を出版というかたちで利用することがあります。

また、企業ばかりでなく個人であっても、他人の著作物を使うことで利便性を高めたり趣味を深めることができるならば、喜んで使うでしょう。それが無料で配布されているならばなおさらです。たとえば、ソフトウェアやウィキペディア、ほかにも無料で利用できる壁紙やアイコン、音楽、効果音などの素材、画像などをあげることができます。

ただし、他人の著作物を利用する多くの場合、その対価として金銭の授受が行われるのが通常であるということは理解しておいてください。

3)まとめ

このように、自分の創作した著作物を他人に利用させること、および他人の創作した著作物を利用することは、双方の目的・利益が合致すれば、おたがいに意味のあることとなります。

著作者は、その著作物につき有している著作財産権を他人に利用させることができます。本章では、権利譲渡(61条)、利用許諾(63条)、出版権の設定(79条)、権利放棄に絞って解説することにします。