1. 美術の著作物等の原作品の所有者による展示(45条) B
  2. 美術の著作物等の展示に伴う複製(47条) B
  3. プログラムの著作物の複製物の所有者による複製など(47条の2) B+

1)美術の著作物等の原作品の所有者による展示

美術の著作物の原作品や写真の著作物の原作品の所有者は、これらの著作物を公に展示することができます(45条1項)。これらの著作物の所有者の同意を得た者も同様です(同項)。

美術の著作物または写真の著作物の原作品を譲り受けた人は、公に展示する慣行があり、さらに、美術や写真の原作品の売買においては、売主である著作権者としても、将来買主が展示することは予想しているはずです。そこで、所有権と展示権(25条)とのあいだの調整を図るべく、展示権を制限する規定として本条が設けられました。

45条1項では、上記著作物の「所有者」または「その所有者の同意を得た者」による展示が認められていますので、けっきょくのところ展示権はあまり意味のない権利、または基本的には働く余地のない権利といえます。

ただし、街路、公園、建造物の外壁など、屋外の場所に恒常的に設置することはできません(45条2項)。なぜなら、46条があるために、屋外の場所での設置を認めてしまうと広範囲な利用を他人に許すことになり、著作権者の不利益を看過できないからです。

著作物は情報という無体物ですが(1-3-4.1)参照)、展示されている著作物は原作品という有体物によって具現化したものです。そのため、著作物の所有者がこれを展示すれば、展示権と所有権が抵触することになります。そこで、両権利の調整を行っているのが45条というわけです。

2)美術の著作物等の展示に伴う複製

美術の著作物や写真の著作物の原作品を公に展示する者は、これらの著作物の解説や紹介を目的として、観覧者のために小冊子に著作物を掲載することができます(47条)。ただし、出所の明示が必要です(48条1項1号)

ここでいう「小冊子」とは、観覧者のために著作物の解説または紹介を目的とする小型のカタログや、目録・図録をさし、実質的にみて観賞用の豪華本や画集は含まれません(東京地判平成元.10.6「レオナール・フジタ展カタログ」事件、東京地判平成9.9.5「ガウディとダリの世界展」事件、東京地判平成10.2.20「バーンズ・コレクション」事件)。

前記45条によって、美術の著作物や写真の著作物の原作品は公に展示することができますが、パンフレットなどにそれらの写真を掲載できないとすれば不便ですし、パンフレットは観賞用ではないのですから、写真掲載を認めたところで著作権者に大きな不利益はないでしょう。そこで、47条が設けられました。

3)プログラムの著作物の複製物の所有者による複製など

(1)原則

プログラムの著作物の複製物の所有者は、以下の要件を満たす場合に限り、複製または翻案をすることができます(47条の2第1項)。

  1. 当該著作物を、電子計算機において自ら利用するために必要と認められる限度であること
  2. 113条2項が適用される場合でないこと(10-4.3)において後述)

PCソフトのバックアップが本項に該当します。ただし、「利用するために必要と認められる限度において」という要件があるので、たとえば会社が全従業員の数だけPCソフトをバックアップするというようなことは、認められません。

なお、私的複製の場合は、より自由に複製・翻案ができます(30条1項・43条1号)。また、「プログラムの著作物の複製物」というのは、市販されているPCソフトや、雑誌の付録CD、インターネット上で配布されているPCソフトなどのことをさしています。

(2)例外

47条の2第1項の複製物の所有者は、当該複製物、または同項の規定によって作成された複製物の所有権を、滅失以外の事由によって失った場合は、これらを保存してはなりません(47条の2第2項)。

たとえば、PCソフトを買ってきてコピーします。そして、コピーされたものを手元に残し、コピー元のPCソフトは中古店に売ります。あるいは逆に、コピーされたものを売って、コピー元のほうを手元に残します。こういった行為は認められないということです。なぜなら、1個のソフトウェアから複数のソフトウェアが作成されて使用されることになり、著作権者の経済的利益を不当に害することになるからです。

ただし、火事や地震などによって複製品を失った場合は、「滅失」にあたり、他方の複製品は手元に残してかまいません。滅失によってソフトウェアを失った場合は、同時に複数の者が使用することはないので、保存してもよいのです。