著作権者の経済的利益を大きく損なうとはいえない利用行為につき、著作権の効力が制限されています。すなわち、私的複製(30条1項)、非営利上演等(38条)、公開されている美術の著作物等の利用(46条)です。

ただ、著作権者に与える影響が看過できないと考えられる場合は、これらの規定は変容を受けます。たとえば、下記1)で述べる補償金制度の誕生は、デジタル技術の普及が要因です。また、公共図書館による図書の貸出しについても、著作権者の生活を困窮させるものであるとして、補償金制度を採用すべきだと主張する人もいます(いわゆる公共貸与権の新設)。

1)私的複製

私的使用のために複製を行うことができます(30条1項)。これを私的複製といいます。…続きを読む

2)非営利上演等

「非営利かつ無料であれば大規模なものが頻繁に行われることは少なく、著作権者に大きな不利益を与えないと推察される」ため、著作権を制限して著作物の利用を認めています(田村・概説204頁)。…続きを読む

3)公開されている美術の著作物等の利用

建築の著作物、または屋外の場所に恒常的に設置されている美術著作物の原作品は、いずれの方法によるかを問わず利用することができます(46条)。…続きを読む

4)保守・修理等のための一時的複製

保守・修理のために、携帯電話やハードディスクドライブなどの記録媒体を内蔵する機器を、業者が複製しなければならない場合が多々あります。他方、著作権者としても、それが保守・修理のための一時的な複製であるならば、経済的利益を害されることもないでしょう。

そこで、内臓記録媒体に記録されている著作物は、必要と認められる限度において、当該内蔵記録媒体以外の記録媒体に一時的に記録し、また当該保守または修理のあとに、当該内蔵記録媒体に記録することができるとされています(47条の3第1項)。

また、同様の理由により、初期不良が原因で機器を交換する場合にも複製権が制限されます(同条2項)。ただし、同条1項・2項によるこれらの一時的複製を行った者は、保守・修理・交換が終わったあとには複製物を消去しなくてはいけません(同条3項)。