著作権などを故意に侵害した場合、加害者は以下のような不利益をこうむることがあります。

  1. 差止請求される(112条1項)
  2. 不法行為が成立したとして損害賠償請求される(民法709条以下)
  3. 不当利得返還請求される(民法703条)
  4. 名誉回復措置の請求をされる(115条)
  5. 刑罰に処される(119条〜124条)

1)差止請求される

差止請求(112条1項)とは、権利を侵害する者や侵害するおそれのある者に対して、侵害行為の停止や予防を請求できる権利です。侵害者に著作権侵害についての故意または過失の要件は不要であるため、善意無過失の者に対しても差止め請求が可能です。

著作権法での差止請求として、具体的には侵害行為の停止や予防のほか、侵害の行為を組成した物や、侵害の行為により作成された物、侵害の行為に供された物の廃棄が認められる場合があります(同条2項)。

たとえば、違法に複製されたCD、DVDや、パソコン、違法演奏に使用された楽器などが挙げられます。故意・過失の要件が不要ですので、相手方が著作権侵害の事実を認識していなくても、また注意義務に反していなくとも差止めを請求できます。この点は下記2)の損害賠償請求の場合と異なります。

2)不法行為が成立したとして損害賠償請求される

不法行為による損害賠償請求をされる可能性があります(民法709条以下)。 不法行為とは、故意または過失によって他人の権利や、法律上保護される利益を侵害することをいいます。侵害者に著作権侵害についての故意または過失の要件が必要です。

なお、著作権侵害により発生した損害の額を原告(権利者)が立証するのは困難であるため、これを回避すべく推定規定が設けられています(114条)。また、不法行為による損害賠償請求権は、被害者などが損害および加害者を知ったときから3年間行使しないか、または不法行為のときから20年経過したときは消滅します(民法724条)。

不法行為の成立要件として故意または過失が必要ということはつまり、加害者に故意がなく、また無過失の場合は損害賠償責任を負わないということです。これを過失責任の原則といいます。

3)不当利得返還請求される

著作権を侵害することで加害者がなんらかの利益を得ていた場合は、不当利得として被害者からその利益の返還を求められる場合があります(民法703条、同法704条)。

不当利得とは、法律上正当な理由がないにもかかわらず、他人の財産または労務から利得を受け、これによって他人に損害を及ぼすことで得た利益のことをいいます(民法703条)。

自分で創作した物語を無断で出版された場合、その出版物の売上分などの返還請求ができます。不当利得の返還は、公平の観点から導き出される概念です。

4)名誉回復措置の請求をされる

著作者人格権の侵害の場合、名誉回復措置として謝罪広告が認められることがあります(115条、民法723条)。

謝罪広告とは、他人の名誉を侵害した場合に、そのことを陳謝する広告のことです。裁判所が加害者(被告)に命じ、加害者は新聞などに謝罪広告をすることになります。

5)刑罰に処される

加害者が故意に著作権や出版権、著作隣接権を侵害した場合、10年以下の懲役もしくは1000万円以下の罰金に処される場合があります(119条1項、併科あり)。また、著作者人格権や実演家人格権を故意に侵害した場合は、5年以下の懲役もしくは500万円以下の罰金に処されることがあります(同条2項、併科あり)。

119条は著作権等の侵害罪、120条は著作者が存しなくなったあとにおける人格的利益侵害の罪、120条の2は技術的保護手段回避装置等の罪、121条は著作者名詐称の罪、122条は出所明示義務違反罪、122条の2は秘密保持命令の罪をそれぞれ規定しています。法人が加害者の場合は124条が適用されます。

著作者でない者の実名または周知の変名を著作者名として表示した著作物の複製物を頒布する行為は、親告罪ではなく非親告罪です(123条・121条)。これは、他人が創作した作品であるのに、自分で創作したものであるかのように見せかけていることが社会的に混乱をもたらす要因となり、その意味で悪質であるからです。ほかには、120条および122条も非親告罪です(123条参照)。

著作物の複製物だけではなく、原著作物の著作者でない者の実名または周知の変名を、原著作物の著作者名として表示した二次的著作物の複製物を頒布した場合も、同様に処罰されます(123条・121条)。121条で注意が必要なのは、「複製物」の頒布が犯罪にあたる行為であり、「原作品」に他人の実名・変名を記載して販売した場合は本条の問題ではなく、氏名表示権の問題となるということです。