1)著作者の定義

著作物を創作した者のことを著作者といいます(2条1項2号、創作主義)。著作者といえるためには年齢や職業は関係がありません。幼稚園児や小学生であっても、著作物を創作すれば著作者となります。また、著作物を創作すれば、なんらの手続きを必要とせず著作者として保護を受けることができます(無方式主義1-3-1.参照)。

2)著作者と著作権者

著作者と著作権者は、本来は一致します。しかし、著作権の全部または一部を譲渡(61条)した場合や、相続(民法882条)した場合などには、著作者と著作権者は一致しません。後述しますが、映画の著作物の場合も同様です。

著作者とは、著作物を創作した者のことです。その著作物につき発生する権利が著作権ですから、本来は著作者が著作権を有しているのです。しかし著作者でなくとも、著作権を譲り受けた者や、著作権を相続した者も著作権者となりえます。

たとえば、Aさんが絵画を描いた場合、この絵の著作者および著作権者はAさんです。しかし、彼がBさんに著作権の全部を譲渡すれば、Bさんは著作者でないものの著作権者となり、Aさんは著作者であるものの著作権者ではなくなります。

3)著作者でない者

以下の者は著作者とはいえません。いずれの者も、著作物の作成に創作的に関与したということはできないからです。

  • 企画ないし構想をしただけの者(最判平成5.3.30「智恵子抄」事件)
  • 助言者、助手
  • 素材提供者(東京地判平成10.10.29「SMAPインタビュー記事」事件)
  • 請負契約における注文者(東京地判昭和39.12.26「高速道路パノラマ地図」事件)

雑誌記者がタレントにインタビューしたさい、記者の企画・方針に応じてその口述回答を取捨選択し、表現を加除訂正する過程において、口述者により手を加えらずに文書を作成した場合、タレントは文書作成のための素材を提供したにすぎず、したがって著作者とはいえません(前掲「SMAPインタビュー記事」事件)。

また、高速道路のパノラマ地図の作成を企画し、画家にその作成依頼をした場合、注文者がたとえ空中写真の資料や縮小地図を提供して、地図に入れるべき主要道路や建物を指定するなどしても、地図の著作者は画家であって注文者ではありません(前掲「高速道路パノラマ地図」事件)。

しかし、絵画的ではない学術的な性質を有する世界地図を作成するにあたり、注文者が製図家に対して資料を収集・提供しただけでなく、細部にわたって記載事項を取捨選択し、記載方法を枝葉末節まで細かく具体的に指示していた場合は、注文者が著作者となります(東京地判昭和54.3.30「現代世界総図」事件)。

請負契約というのは、当事者の一方(請負人)が仕事を完成し、それに対して相手方(注文者)が報酬を与えることを内容とする契約のことをいいます(民法632条)。たとえば、Webサイトの制作をWebデザイナーに依頼することがこれにあたります。
 請負契約の場合は、通常、請負人が著作者となりますから、いまの例でいえばWebデザイナーが著作者です。そして、原則として著作者が著作権者ですので、Webデザイナーが著作権者となります。しかし、これでは注文者がサイトを自由に利用できず、なにかと不都合です。そこでこういった事態を防ぐために、請負契約において事前に著作権の移転を内容としておくか、または注文者が請負人から事後的に著作権を譲り受けるのが通常です。
 いまのケースだと注文者は、「お金を出したのはおれなんだから、著作者は自分だ」と考えるかもしれませんが、それは著作権法上まちがっているのです。著作者か否かの判断に、金銭の出費は考慮されません。

4)著作者の推定

著作者がだれであるのか立証するのが困難な場合のために、著作者の推定規定が設けられています。すなわち、著作物の原作品に、または著作物の公衆への提供・提示のさいに、氏名または周知の変名が著作者名として通常の方法により表示されている者は、その著作物の著作者と推定されます(14条)。