現行法は、著作権者に複製権を認めることで、著作権者に対価を還流させようとしています。しかし、一度複製されたものが市場に出回ると、結果的には法が複製権を認めた意義が薄れてしまい、著作権者は十分な対価を得ることができません。そこで認められているのが、頒布権(26条)、譲渡権(26条の2)、貸与権(26条の3)といった支分権です。

なお、頒布権が規定されたのは1970(昭和45)年、譲渡権が規定されたのは1999(平成11)年、貸与権が規定されたのは1984(昭和59)年です。したがって、これらの支分権を古い順に並べ替えると、頒布権→貸与権→譲渡権となります。

頒布権、譲渡権、貸与権は、いずれも最近認められるようになった新しい権利であることがわかります。頒布権については、契約や上映権(後述)で十分ではないかと考え、その存在を疑問視する研究者もいます。

1)頒布権

著作権者は、その映画の著作物を複製物により頒布する権利を専有しており(26条)、頒布権は映画の著作物にのみ認められています。…続きを読む

2)譲渡権

譲渡権とは、著作物を原作品またはその複製物の譲渡により公衆に提供する権利です(26条の2第1項)。映画の著作物は頒布権で処理されるため除きます。…続きを読む

3)貸与権

貸与権とは、著作物をその複製物の貸与により公衆に提供する権利のことをいいます(26条の3)。ただし、映画の著作物は頒布権で処理されるため除きます。…続きを読む