著作権管理団体とは、著作権等管理事業法(以前は仲介業務法)に基づく登録を行っている団体のことをいいます。具体的には、著作権者から著作権の管理を委託され、著作物について第三者に利用許諾を与えたり、著作物使用料を徴収するなどの業務を行っています(管理委託契約)。
著作権管理団体の設立が認められているのは、著作権者がみずから利用許諾を与えたり使用料を徴収するのは煩雑であり、また、著作物利用者が著作権者を探して利用許諾を求めたり、使用料を支払うのは煩雑であるからです。
著作権者のなかには著作物を創作することを仕事としている人がいますし、著作隣接権者のなかには著作物を伝達するのが仕事という人がいます。したがって、自分でいちいち利用許諾を与えたり、使用料を徴収したりというような事務は煩雑なものです。
他方、他人の著作物を利用する側としても、著作権者や著作隣接権者を自力で探し出して利用許諾を求めるのは煩雑です。とりわけ映画の著作物や音楽の著作物となると、関与している権利者は多数いるわけですから、個別に連絡をとるのはめんどうです。
そこで、以上の観点から認められているのが著作権管理団体です。すなわち、著作権管理団体は、本来ならば著作権者がすべき著作権の管理業務を引き受け、他方では著作物利用者の窓口となり、両者のあいだを仲介しているのです。こうすることで、著作権者は煩雑な事務をせずにすみ、著作物利用者としても著作権者を探す時間と労力を省くことができるというわけです。
もっとも、著作権管理団体は著作権者(著作隣接権者)とのあいだで管理委託契約を締結しているため、中立的な団体ではありません。あくまでも著作権者側の団体というのが実情です。
管理委託契約には、信託契約と委任契約とがあります。前者は、受託者に著作権または著作隣接権が移転するのに対し(著作権等管理事業法2条1項1号)、後者は著作権等が移転しないという違いがあります(同項2号)。
著作権管理団体には、たとえば以下のものがあります。団体名をクリックすると、当該団体のサイトへ移動します。他の著作権管理団体については、文化庁のサイトをご覧ください。
このなかで有名なのが、日本音楽著作権協会(JASRAC)です。作詞家、作曲家、音楽出版社などの著作権者に代わって著作財産権を管理している団体です。具体的には、音楽の利用希望者に対する許諾や、著作権使用料を徴収して各著作権者に分配する業務などを行っています。通常、著作権使用料の分配相手は、著作権者たる音楽出版社です(音楽出版社については後述)。
ここで注意が必要なのは、JASRACは著作者人格権の管理委託を受けていないということ、また著作財産権を管理しているといっても、翻案権については除外されているということ、さらに著作隣接権の管理はしていないということです。
JASRACによるVip替え歌Wikiへ歌詞の削除を要請するメール内には、「同一性保持権」や「翻案権」の文字がありますが、これらの権利については第三者として警告しているにすぎません。なぜなら、同一性保持権は著作者人格権であり一身専属性を有しているため、著作権者はJASRACに管理させることができず、また翻案権については、JASRACが扱っていないからです。さらに「著作隣接権」の文字もありますが、これについても翻案権と同様です。
けっきょく、JASRACが当事者として言及しているのは、複製権と公衆送信権が侵害されているという点のみにあります。つまりJASRACとしては、「替え歌は同一性保持権と翻案権を侵害しているから違法だ」というところよりも、「歌詞をサイトにアップロードするのは複製権と公衆送信権を侵害しているから違法だ」というところに重点を置いて、削除要請しているわけです。アップロードされたものが替え歌か否かは関係ありません。
著作権等管理事業法に基づく登録はしていませんが、関連団体として以下のものがあります。団体名をクリックすると、当該団体のサイトへ移動します。
音楽出版社とは、著作権の管理や、音楽著作物のプロモーション(開発)、原盤制作などを業務としている会社のことをいいます(一覧)。
著作権の管理は、具体的にはまず、作詞家や作曲家といった著作権者から著作権を譲り受け、楽曲を日本音楽著作権協会(JASRAC)に届け出ます。そして、JASRACが当該楽曲の使用料を利用者から徴収し、そこから管理手数料を引いて、残りを音楽出版社に分配します。音楽出版社は、JASRACから受け取ったこの著作権使用料を作詞家や作曲家たちにさらに分配します。このとき、3/1〜2/1が手数料として引かれるようです。これら一連の流れが管理業務です。
また、プロモーションというのは、具体的にはCD化や配信のためのプロモーション、セールスプロモーション、タイアップのためのプロモーションなどのことをいいます。開発業務とも呼ばれています。
最後に原盤制作は、レコーディングやマスタリングをしたり、完成した原盤をレコード会社(一覧)に譲渡して対価を得る業務(いわゆる原盤契約)などのことをさします。このとき受け取る対価が、一般に原盤使用料ないし原盤印税といわれるものです。
なお、音楽出版社という名称は、楽曲が楽譜で出版されていた時代の名残です。