1)権利放棄の意味

(1)著作権の放棄

著作権法上の規定はありませんが、著作権も財産権である以上、基本的に放棄することが可能です。たとえば、ウィキペディアに自分で撮影した画像をアップロードする場合、GFDLやCCといったライセンスを付すこともできるのですが、著作権を放棄することも可能です(画像名前空間参照)。また、著作権放棄した画像だけを集めたWebサイトもあります。

著作権者が著作権を放棄すれば、その著作物はパブリック・ドメインとなり、だれでも自由に利用することができます。たとえ著作権の保護期間中であっても、著作権者がみずからの自由意思により著作権を放棄した以上、それを保護する必要はありません。よって、当該著作物を著作権者に無断で複製して販売することも、翻案して二次的著作物を作ることも自由です。

(2)著作者人格権の放棄

他方、著作者人格権を放棄することができるか(著作者人格権の不行使契約を有効に締結できるか)については、争いがあります。

この点、著作者人格権と人格権が同質なものであることを前提とすると(同質説)、人格権が放棄できない以上、著作者人格権も同様に放棄できないことになりそうです(4-1.4)参照)。しかし、さまざまな著作物があるうえに、著作者人格権も複数認められているのですから、一律に著作者人格権を放棄できないと考えることはできません。

また、かりに著作者人格権をいかなる場合にも放棄できないとすると、相手方の著作物の利用に対する予測可能性を奪うことになってしまいます。その結果、著作者にとって不利な内容の契約が締結されることも考えられ、法が著作者人格権を認めた趣旨に反することになります。

そこで、著作者人格権の放棄が有効といえるか否かは、@どのような著作物にかかる著作者人格権の放棄なのか、Aどのような種類の著作者人格権についての放棄なのか、B著作者人格権の放棄を否定した場合の著作物の利用・流通の妨げられる程度、などの点を総合的に考慮して、個別・具体的な判断が必要であるといえます。

なお、「著作者人格権の放棄」という用語と、「著作者人格権の不行使契約」という用語は、同じ意味です(中山・著作権法363頁)。

2)フリーウェア

フリーウェア(フリーソフト)の「フリー」は、「無償」といった意味のほか、「自由」という意味でも使用されます。そのため、プログラム著作物がフリーウェアである場合、どのような利用でも許されると勘違いされやすく、配布を終了したフリーウェアが著作権者に無断で再配布されることがあります。しかし、必ずしも著作権者が権利放棄しているというわけでないことに注意してください。むしろ著作権を放棄していないことのほうが多いといえます。

フリーソフトウェアという呼称がありますが、これはフリーソフトウェア財団が提唱するライセンスに基づいたソフトウェアをさしており、フリーウェアとは区別されます。また、フリーソフトウェアの「フリー」は自由を意味しているだけであり、必ずしも無償であるわけではありません(詳細はコピーレフトを参照)。