1)序

著作権者は、その著作物を公衆に直接見せ、または聞かせることを目的として上演・演奏する権利を専有します(22条)。

「公衆に直接…聞かせることを目的として」と規定されているので、そのような目的さえあれば、たとえ現実に人が集まっていなくても公に上演・演奏したことになります(公衆の定義につき(5-3-2.1)参照)。

上演・演奏などは複製と異なり、著作物を無形的に利用するものです。このような無形的利用は、著作物が「その場で消滅し、外部に流出して権利者に損害を与える危険性がないために、公ではない利用形態はそもそも権利の範囲外とされてい」ます(中山・著作権法217頁)。

2)上演

上演とは、下記3)で後述する演奏以外の方法により、著作物を演ずることです(2条1項16号)。演劇や学芸会、落語などをすることが上演にあたります。

3)演奏

(1)定義

演奏とは、音楽の演奏や、歌唱のことです(2条1項16号参照)。著作物の演奏を録音したものを再生することも演奏にあたるので(2条7項)、お店でBGMとしてCDを流す行為や、視聴コーナーでCDを視聴させるサービスも演奏です。

歌うことが演奏に該当するというのは、常識で考えると間違えやすいところです。演奏の定義に限らず、法律上の定義には十分気をつけてください。

(2)問題点

演奏による著作物の利用主体をどのように決定するのかにつき争いがあります。たとえば、スナック店が店内にカラオケ機器を設置し、お客さんにカラオケを勧めるなどして歌わせていた場合、演奏しているのはだれでしょうか。

かりにお客さんが演奏していると認められれば、これは非営利の演奏なので著作権侵害ではありません(38条1項、6-2-2.1)で後述)。しかし、お店の経営者が演奏していると認められれば、営利の演奏ということになり著作権侵害となります。

この点、最高裁は、管理性利益性というふたつの観点から著作物の利用主体を決定して、演奏の主体は経営者らであり、営利目的による演奏であると判断しました。この考え方のことをカラオケ法理といいます(最判昭和63.3.15「クラブ・キャッツアイ」事件)。「ファイルローグ」事件(東京高判平17.3.31)においても類似の考え方がされています。

「クラブ・キャッツアイ」事件で最高裁は、「客やホステス等の歌唱が公衆たる他の客に直接聞かせることを目的とするものであること(著作権法二二条参照)は明らかであり、客のみが歌唱する場合でも、客は、上告人ら(筆者注:スナックの共同経営者)と無関係に歌唱しているわけではなく、上告人らの従業員による歌唱の勧誘、上告人らの備え置いたカラオケテープの範囲内での選曲、上告人らの設置したカラオケ装置の従業員による操作を通じて、上告人らの管理のもとに歌唱しているものと解され、他方、上告人らは、客の歌唱をも店の営業政策の一環として取り入れ、これを利用していわゆるカラオケスナツクとしての雰囲気を醸成し、かかる雰囲気を好む客の来集を図つて営業上の利益を増大させることを意図していた」と述べました。

4)上演権・演奏権の制限

上演権・演奏権は、非営利で行う上演・演奏については及びませんので(38条1項)、たとえば学校の学芸会で児童・生徒が演奏する場合には、著作権者の許諾なく自由に行うことができます(6-2-2.で後述)。