条約上、たとえば、A国の著作権の保護期間が30年で、B国のそれが50年だった場合、B国はA国国民の著作物を30年保護すればよいということになっています。これを相互主義(ベルヌ条約7条(8))といいます。
すなわち、相互主義とは、わが国より保護期間の短い同盟国の著作物については、その国において定められている保護期間だけ保護すればよいことをいいます(58条)。これは、内国民待遇の原則(ベルヌ条約5条)の例外です。ここで内国民待遇の原則とは、外国著作物を内国著作物(6条1号・2号)と同程度に保護することをいいます。
かりに、保護期間を考えるときに内国民待遇の原則を適用すると、上の例でB国はA国国民の著作物を50年保護しなければいけないのに対し、A国はB国国民の著作物を30年保護すればよいので、B国にとっては不公平な結果となります。そこで、内国民待遇の原則の例外として相互主義が規定されているのです。
なお、日本人が日本よりも保護期間の短い国で著作物を最初に発行した場合であっても、その国の著作権法は適用されず、わが国の著作権法が適用されます(58条括弧書き)。
保護期間の過ぎた外国の著作物を利用するさい、考慮しなければいけないのが戦時加算です。戦時加算とは、第二次世界大戦中に日本が連合国民の著作権を保護していなかったとして、著作権の保護期間に戦時期間を加える制度のことをいいます。
戦時加算は、サンフランシスコ平和条約15条(c)において義務付けられ、連合国及び連合国民の著作権の特例に関する法律4条で具体的に規定されています。これによると、開戦日である1941(昭和16)年12月8日から平和条約発効日の前日までが、保護期間に加算されることになります(同法4条2項)。
そして、平和条約が発効した日は各連合国によって異なるのですが、たとえばアメリカ、イギリス、フランスなどの著作物の保護期間は、3794日が加算されることになります。もっとも、ソ連(現ロシア)や中国は日本との平和条約に署名していないので、同法2条1項でいう「連合国」にあたらず(平和条約25条但書き)、戦時加算を考慮する必要はありません。