1)保護期間の算定方法

(1)死亡時起算主義

保護期間は著作物の創作のときに始まり(51条1項)、著作者の死後50年を経過するまでのあいだ存続します(同条2項)。これを死亡時起算主義といいます。著作者の死後50年まで著作権を保護する趣旨は、著作者本人およびその子孫2代を保護するためです。

共同著作物の場合は、最後に死亡した著作者の死後から起算します(51条2項)。二次的著作物の場合は、その原著作物とは別個独立した保護期間となります。つまり、原著作物の著作者の著作権が保護期間経過により消滅しても、二次的著作物の著作者の著作権は存続していることがありえます。

51条によれば、著作者の生存期間に加えて死後50年間、著作権が保護されることになります。あくまでも「死後50年」であり、「公表後50年」ではないことに留意してください。

(2)暦年主義

保護期間の終期の算定方法は、著作者が死亡した年、または著作物が公表・創作された年の翌年から起算します(57条)。これを暦年主義といいます。たとえば、2007年4月に著作者が死亡した場合、著作権は2008年1月1日から起算することになります。

暦年主義を採用した趣旨は、保護期間の計算が容易であること、また、著作者の死亡時や著作物の公表時などは、正確に特定することが困難なためです。

3)著作権の消滅

(1)相続人の不存在・法人の解散

相続人が不存在の場合、相続財産は国家に帰属するのが原則です(民法959条)。しかし、著作権法は文化の発展を目的としているため(1-2.参照)、この観点から著作権を消滅させて、万人による自由な利用を認めています(62条1項1号)。したがって、当該著作物はパブリック・ドメインとなります。

著作者と著作権者が分離(3-1.2)参照)したあとに著作権者が死亡し、相続人が不存在である場合も、著作権は著作者に帰属せずに(戻らずに)消滅します(通説)。なぜなら、相続人の不存在という偶然の事由により、「棚から牡丹餅式」に著作者に著作権を帰属させる必要性がないうえに、創作へのインセンティブとはならず、著作物の自由な流通を阻害することになるからです(中山・著作権法347頁)。

また、著作権者である法人が解散し、民法72条3項などにより著作権が国庫に帰属することになる場合も、62条1項1号と同様の趣旨から著作権は消滅します(62条1項2号)。

(2)著作権の放棄

著作権法に明文規定はないものの、著作権も財産権である以上、放棄することができ、その結果権利は消滅します。詳細は8-5.権利放棄で後述します。

(3)消滅時効

著作権は財産権であるため、民法167条2項でいう「所有権以外の財産権」にあたり、消滅時効にかかるようにみえます。消滅時効というのは、一定の期間権利を行使しないでいると、その権利が消滅してしまう制度のことをいいます。

しかし、著作権は第三者からの侵害を阻止するという消極的・防御的な権利であるため、権利を行使しないという不作為により、消滅時効が進行して権利が消滅するものではないと考えられます(中山・著作権法349頁)。