1)原則

建築の著作物、または屋外の場所に恒常的に設置されている美術著作物原作品は、いずれの方法によるかを問わず利用することができます(46条)。ただし、慣行があるときは出所を明示しなくてはいけません(48条1項3号)。

なお、上記著作物以外の著作物については、本条による自由利用の対象ではありません。したがって、たとえばブルース・リーの墓には彼の写真が掲載されていますが、これを日本で自由に利用することはできません。

(1)趣旨

46条は展示権を制限するものですが、その趣旨は、他人に広く著作物を見せたいという著作権者の意思の尊重、旅行のさいの写真撮影やロケーション撮影(ロケ)などの慣行が存在していること、かりに46条のような場合に展示権の制限を認めないとすると、一般人の行動の自由を過度に制約してしまうこと、などにあります。

(2)「屋外の場所」

ここでいう「屋外の場所」とは、一般公衆に開放されている屋外の場所や、一般公衆の見やすい屋外の場所をさします(46条本文)。たとえば公園や遊園地、建物の壁画や屋上の広告看板などがこれにあたります。入場料を支払わなければ入れない遊園地であっても、46条本文に該当する場合があります(加戸・逐条講義284頁)。

美術の著作物については「屋外の場所」に恒常的に設置されたものであることが必要ですが、建築の著作物についてはそのような要件は規定されていません。建築の著作物は屋外に設置されるものだからです。

ショー・ウィンドウについては、建造物の内部であり屋外の場所とはいえず、46条の対象外とする見解(加戸・逐条講義284頁)と、公衆の見やすい屋外の場所であるため同条の対象であるとする見解(田村・概説208頁)とがあります。

(3)「恒常的に設置する」

また、「恒常的に設置する」とは、社会通念上、ある程度の長期にわたり継続して、不特定多数の者の観覧に供する状態に置くことをさします(平成13.7.25「横浜市営バス」事件)。

(4)「原作品」

本条で自由に利用ができる美術著作物は、原作品に限られます。

原作品については、著作権者に展示権が認められており(25条)、他人が美術著作物の原作品を屋外で恒常的に設置することを、著作権者は禁止できます(45条2項)。これに対し、複製物については、展示権が認められておらず、だれもが自由にこれを屋外に恒常的に設置できるため、著作権者に与える不利益が大きいものとなります。そこで、46条では自由利用の対象を原作品のみに限定しているのです。

(5)「いずれかの方法によるかを問わず」

いずれかの方法によるかを問わず」利用できるので、複製だけではなく翻案公衆送信も可能です。たとえば公園に設置されている銅像を撮影して、Webサイトにその写真を掲載したり、無料配布のカレンダーにしたりという行為が自由にできます(有料の場合は下記2)で後述)。

建築の著作物はあくまでも純粋美術と同視できるものでなくてはいけません。したがって、純粋美術と同視できない以上、一般住宅やオフィスビルなどは建築の著作物ではないため、著作権法では保護されないことに注意してください(3-2.5)参照)。

2)例外

ただし、以下の各号に該当する場合はできません(46条)。

  1. 彫刻を増製し、またはその増製物の譲渡により公衆に提供する場合(1号)
  2. 建築の著作物を建築により複製し、またはその複製物の譲渡により公衆に提供する場合(2号)
  3. 45条2項に規定する屋外の場所に、恒常的に設置するために複製する場合(3号)
  4. もっぱら美術の著作物販売を目的として複製し、またはその複製物を販売する場合(4号)

(1)1号

(2)2号

建築著作物を自由に模倣できたのでは、建築著作物を保護する趣旨に反するため(10条1項5号)、自由利用の対象外としました(46条2号)。

(3)3号

展示権は原作品に及び、他人が著作権者の原作品を屋外に恒常的に設置(つまり展示)しようとする場合、著作権者は46条の利用を予測して、許諾するか否かを決めることができます(45条2項)。しかし、展示権は複製品には及ばないため、複製品を46条から除外しなければ、だれもがこれを屋外に恒常的に設置できることになり、著作権者に著しい不利益を与えることになります。そこで、複製品を除外し、原作品のみを自由利用の対象としました(46条3号)。

このあたりは、46条のほかに45条や25条など、複数の条文が関係しているので少しわかりにくいかもしれません。しかし、25条や45条2項が原作品のみを対象とした規定であるというところがポイントです。

(4)4号

美術の著作物につき販売を目的として複製する場合は、原則どおり著作権者の許諾が必要です(同条4号)。なぜなら、そのような場合は著作権者に著しい経済的打撃を与える恐れがあるからです。たとえば、さきの例で公園に設置されている銅像を撮影して、カレンダーにして有料で配布したりという行為は、無断で行うことができません。

また、本号は「もっぱら」の要件があるために、たとえば車体に絵が描かれているバスを写真撮影し、その写真を幼児向けの教育用書籍に掲載して販売する行為は該当せず、違法ではありません(前掲・「横浜市営バス」事件)。

46条4号は、美術の著作物についての規定であるため、建築の著作物については対象外となります。したがって、東京タワーのミニチュアを作成して販売することは認められます。ただし、美術の著作物は建築の著作物を包含する概念であるとし、建築の著作物も同号の対象であるとする見解もあります(田村・概説211頁)。