1)放送事業者の権利

(1)総説

放送とは、公衆送信のうち、公衆によって同一の内容の送信が同時に受信されることを目的として行う、無線通信の送信をいいます(2条1項8号)。

また、放送事業者とは、放送を業として行う者のことです(同項9号)。具体的には、日本放送協会(NHK)、一般放送事業者(民間放送局/NAB)、衛星放送、コミュニティ放送(コミュニティFM)などです。放送事業者には、複製権(98条)、再放送権・有線放送権(99条)、送信可能化権(99条の2)、テレビ放送の伝達権(100条)が認められています。

放送の場合、通常は著作物を創作しませんが、著作物を伝達する存在として必要な存在です。そして、放送事業のためには多大な資金を要するため、他人が自由に放送を利用できるとなれば放送事業が成り立ちません。そこで、放送事業者に著作隣接権が認められました。

放送事業者に認められている著作隣接権は許諾権のみであり、具体的には複製権(98条)、再放送権・有線放送権(99条)、送信可能化権(99条の2)、テレビ放送の伝達権(100条)が与えられています。

  • 複製権(98条)
  • 再放送権・有線放送権(99条)
  • 送信可能化権(99条の2)
  • テレビ放送の伝達権(100条)

(2)複製権

放送事業者は、放送に係る音または影像を録音・録画し、または写真などにより複製する権利を専有しています(98条)。権利の内容については複製権をご覧ください。

たとえば、Aの放送をBが受信して放送し、Cがその放送を録音・録画する行為が複製です。「放送に係る音または影像」は、放送した音または影像のことですから、いまの例だとAに対してではなく、Bに対して複製権侵害が成立するということです。Aは下記(3)で述べる再放送権の侵害を主張できます。

(3)再放送権・有線放送権

放送事業者は、放送を受信して再放送し、または有線放送する権利を専有しています(99条)。

たとえば、Aの放送をBが受信して、これをAの許諾なく放送(すなわち再放送)すれば再放送権侵害となります。ここでいう「再放送」というのは、ドラマの再放送とは違います。

(4)送信可能化権

放送事業者は、放送や放送を受信して行われた有線放送を受信して、その放送を送信可能化する権利を専有しています(99条の2)。権利の内容については送信可能権をご覧ください。

(5)テレビ放送の伝達権

放送事業者は、放送や放送を受信して行われた有線放送を受信して、影像を大画面スクリーン等で公衆に伝達する権利を専有しています(100条)。伝達権もご覧ください。

2)有線放送事業者の権利

割愛します(2条1項9の2、9の3、100条の2〜100条の5)。