1)定義

レコード製作者とは、レコードに音を最初に固定した者のことです(2条1項6号)。たとえば、川のせせらぎや海の波音、虫や鳥の鳴き声、人が歩く音、街のざわめき、騒音などをオーディオテープやCDに録音すれば、レコード製作者といえます。たんなる趣味でもかまいません。

逆に、趣味ではなくビジネスとしてレコード製作を行っている者として、レコード会社(レーベル)や音楽出版社があげられます(音楽出版社につき著作権管理団体を参照)。

レコードとは、レコードのほか、CDやオーディオテープ、オルゴールなどに、音を固定したもののことです(同項5号)。ただし、プロモーションビデオ(いわゆるプロモ、PV)や、コンサート映像を収録したDVDなど、音をもっぱら影像とともに再生することを目的としたものは除かれます。

なお、実務上、レコード製作者が有している権利を原盤権とよぶことがあります。

2)許諾権

(1)複製権

レコード製作者は、そのレコードを複製する権利を専有しています(96条)。権利の内容については複製権をご覧ください。

(2)送信可能化権

レコード製作者は、そのレコードを送信可能化する権利を専有します(96条の2)。権利の内容については送信可能化権をご覧ください。

(3)譲渡権

レコード製作者は、そのレコードの複製物の譲渡により、公衆に提供する権利を専有します(97条の2)。権利の内容については譲渡権をご覧ください。

(4)商業用レコードの貸与権

レコード製作者は、そのレコードが複製されている商業用レコード貸与により、公衆に提供する権利を専有します(97条の3)。権利の内容については貸与権をご覧ください。

3)二次使用料請求権・報酬請求権

(1)商業用レコードの放送・有線放送にかかる二次使用料請求権

実演家と同様に(9-2.4)参照)、レコード製作者にも商業レコードによる放送・有線放送に対して二次使用料請求権が与えられています(97条)。

これは、放送・有線放送にレコードを利用することによって利益をあげていることから、一定の利益をレコード製作者に対して還元するための規定です(作花・詳解446頁)。

(2)商業用レコードの貸与にかかる報酬請求権

実演家の場合と同様に(9-2.4)参照)、商業用レコードの貸与について規定が設けられています(97条の3第3項)。

商業用レコードの二次使用料の請求と分配については、日本レコード協会(RIAJ)が指定されて行っています。この点、日本音楽著作権協会(JASRAC)と混同しないようにしてください。JASRACは著作権(狭義)がらみの団体であるのに対して(つまり作詞家・作曲家関連)、日本レコード協会は著作隣接権がらみの団体です。
 さらに、同じ著作隣接権がらみの団体でも、日本レコード協会は実演家著作隣接権センター(CPRA)とも違います。前者はレコード製作者がらみの団体であるのに対して(つまりレコード会社関連)、後者は実演家がらみの団体です(つまり歌手・俳優関連)。