著作権侵害が成立するためには、以下の4つの要件を満たしていることが必要です。

  1. 著作物であること
  2. 著作権が存在していること
  3. 著作権の効力が及ぶ範囲で利用されていること
  4. 利用者が著作物利用について正当な権原を有していないこと

1)著作物であること

著作物でないものは、著作権侵害の対象とはなりません(2-1.参照)。

2)著作権が存在していること

(1)国内法において保護される著作物であること

著作物であっても、わが国の著作権法による保護を受けないもの(6条)については、著作権侵害は成立しません(2-2.1)参照)。

(2)原始的に著作権の目的となる著作物であること

上記(1)と同様、著作物であっても権利の目的とならないものについては、著作権侵害は成立しません(13条、2-2.2)参照)。

(3)著作権が消滅していないこと

著作権の存続期間が満了している場合(51〜58条)や、相続人が不存在の場合(62条)、さらに著作権が放棄されている場合などは、著作権が消滅しているため侵害行為は成立しません(7-2.3)および8-5.参照)。

3)著作権の効力が及ぶ範囲で利用されていること

(1)概説

著作権の効力が制限されている場合は、基本的に著作権侵害が成立しません(6-1参照)。著作権の独占排他的効力の範囲内で著作物が利用されていることが必要です(5-1.参照)。

(2)依拠性と類似性

複製権および翻案権について著作権侵害が成立するためには、作品が既存の著作物を利用して作出されたものであること(依拠性)、および両者における表現が類似していること(類似性)が必要です。条文上は「依拠」という文言はありませんが、判例および学説では依拠性の要件について異論のないところです。

依拠性は、最判昭和53.9.7「ワン・レイニー・ナイト・イン・トーキョー」事件によって示されたものです。すなわち、「著作物の複製とは、既存の著作物に依拠し、その内容及び形式を覚知させるに足りるものを再製することをいうと解すべきであるから、既存の著作物と同一性のある作品が作成されても、それが既存の著作物に依拠して再製されたものでないときは、その複製をしたことにはあたらず、著作権侵害の問題を生ずる余地はない」とし、ある著作物が他人の著作物と偶然一致する部分があったとしても、著作権侵害とはいえないとしました(1-3-2.参照)。

類似性は、最判昭和55.3.28「パロディ・モンタージュ」事件によって示されました。すなわち、「自己の著作物を創作するにあたり、他人の著作物を素材として利用することは勿論許されないことではないが、右他人の許諾なくして利用をすることが許されるのは、他人の著作物における表現形式上の本質的な特徴をそれ自体として直接感得させないような態様においてこれを利用する場合に限られる」としました(5-5-1.参照)。

複製権・翻案権侵害も、他人の著作物を再製(模倣)している点で共通しています。そのため、著作権侵害事件において「複製権または翻案権」というように両者がセットで登場することがあります。依拠性と類似性の要件については、複製権・翻案権侵害以外の事例で問題になることはほとんどありません(中山・著作権法458〜459頁)。

4)利用者が著作物利用について正当な権原を有していないこと

正当な権原を有していないというのは、たとえば著作権者から許諾を得ていない、あるいは出版権の設定(79条)を受けていない、などのことです(8-3.および8-4.参照)。