1)著作権侵害の定義

著作権侵害とは、著作者の権利(著作者人格権著作権)や出版権著作隣接権を侵害する行為をいいます。

2)民事と刑事

著作権を侵害された場合、権利者は損害賠償請求などをしたり、あるいは捜査機関に告訴することができます(詳細は10-3.で後述)。逆に被害者が裁判を望まないならば、それでもかまいません。この場合、著作権などを侵害した者は損害賠償責任を負わされることはないですし、刑罰に処されることもありません。

3)親告罪

原則として、著作権侵害による著作権法違反の罪は親告罪です(123条)。親告罪とは、公訴の提起に告訴を必要とする犯罪のことをいいます。

告訴できるのは著作権侵害の被害者です(刑事訴訟法230条)。被害者が告訴をすれば、検察官は公訴を提起できるのですが(同法247条)、告訴がなければできません。もし被害者の告訴がないのに検察官が公訴を提起すれば、公訴が棄却されます(同法338条4号)。

ここで刑事訴訟手続きの流れを簡潔に述べます。まず著作権を侵害された者が警察に告訴します。そして、警察が捜査を開始し、罪を犯したといえるだけの相当の理由と、逮捕の必要性があれば被疑者を逮捕します。その後、警察は書類や証拠などを検察官に送致します。

検察官は公訴するかどうかを判断し、必要とあれば公訴します。公訴というのは、検察官が裁判所に対して訴追の意思表示をすることです。そして、公判が開始して裁判がなされ、裁判所から刑が言い渡されることになります。判決が確定すれば被告人は刑罰に処されます。

たまに民事訴訟と刑事訴訟をごちゃごちゃにしている人がいます。前者は、当事者間に権利・義務があるのかないのか、法律関係があるのかないのかといったことを判断して紛争を解決するための手続きです。刑罰を科すためのものではありません。したがって、民事訴訟に敗訴したからといって有罪となるわけではないのです。民事訴訟と刑事訴訟はまったく別の手続きです。