1)著作権の性質

著作権法により、著作者には排他的独占権が付与されています。ただし、相対的なものです(相対的独占権)。著作権が独占権であることは、21〜28条の各条における「権利を専有する」という文言に見てとれます。

2)相対的独占権の意味

排他的独占」というのは、たとえば、Aさんが英語で小説を書いたとしましょう。この小説をドラマ化したり映画化したりということを、Aさん以外の人はAさんに無断で行うことはできず(27条)、もしもそのようなことが行われた場合は、Aさんは権利を主張して裁判所に救済を求めることができるということです(10-3.で後述)。

また、「相対的」というのは、たとえばAさんの書いた小説のストーリーが偶然にもBさんの書いた小説のそれと似ていたとしても、著作権侵害とはいえないということです(最判昭和53.9.7「ワン・レイニー・ナイト・イン・トーキョー」事件参照)。Aさんが著作権を侵害したと認められるためには、少なくともBさんの小説に接してこれを自己の作品に用いることで小説を書いていること(依拠といいます)が必要です(詳細は10-2.3)で後述)。

著作権は、1-3-1.無方式主義で既述したとおり著作物を創作するだけでただちに発生し、登録などは必要ありません。また、著作権制度は創作活動というものを広く保護するところに目的があります。したがって、偶然にも類似の著作物が存在していることを理由に著作権侵害が成立するとなれば、創作活動を萎縮させてしまい、創作活動を奨励する著作権法の趣旨に反することになります(1-2.参照)。そこで、著作権は相対的なものであると考えていくのです。

著作権が相対的独占権であるという点は重要です。著作権は著作物を創作するだけで発生することになっており、登録などは必要ありません。ということはつまり、だれがどのような著作物を創作したのか、他人にはわからないというような場合が出てきます。
 したがって、偶然にも他人の著作物とそっくりなものができてしまったときにも著作権侵害が成立してしまうとなると、いつ他人の著作権を侵害するかわかりませんから、趣味で創作活動をする、気軽に表現活動を行う、ということができなくなります。そうすると、多種多様な著作物が出てきたほうがよいのだ、創作活動を奨励して文化を発展させるのだという、著作権法の趣旨に反することになります。
 そこで、たまたま自分の作ったものが他人の作品と同じようなものであっても、それは著作権侵害とはならないということなのです。

3)補足

著作権は相対的な独占権ですが、これに対して特許権は絶対的な独占権です。つまり、AさんとBさんが偶然にも同じ発明をして世に発表したとしても、どちらか一方が先に特許権の効力が発生するための要件を満たしていれば、他方は特許権を侵害したことになります。