1)著作権法の究極の目的

「著作物等の公正な利用」も、また「著作者等の権利の保護」も、両者は「文化の発展」のための手段です。つまり、著作権法の究極的な目的は、文化を発展させることにあります。よって、文化の発展に役立つ行為、たとえば自分の好きな楽曲を生徒が学園祭で演奏してみる、あるいはブログやSNSで考えを述べるといった行為を、尊重しなければいけないということです。

とりわけ、後者のように個性を表現して著作物を創作する行為は、文化の発展にとって重要です。個性が反映されている作品が世にあふれることで人は刺激を受け、それが別の創作活動へと駆り立てます。そして作品を創作した本人も、人から評価を受けることで新たな創作活動を行います。こうして、私たちの文化は洗練され、多様化していくのです。

2)著作者の経済的利益の保護

著作権法の究極の目的は文化の発展にあります。けっして産業の発展(特許法1条、商標法1条、意匠法1条)や、経済の発展ではないということに留意する必要があります。

著作権法の解説でよく使われる「著作者の経済的利益を害することになり妥当でない」という表現は、「著作者の経済的利益を害することで文化の発展を阻害してしまうので妥当でない」という意味合いです。この考えの背景には、著作者の経済的利益を保護することで、つぎの創作へのきっかけ(インセンティブ)となるという思想があります。

この意味で、著作者の経済的利益を保護することはひとつの「目的」ではありますが、文化を発展させるための「手段」でしかないということに留意が必要です。著作者の経済的利益の保護にばかり目を向けてしまうと、著作権法の解釈・適用を見誤る危険性があります。

3)一般個人の重要性

通常、著作権法の議論に意欲的に参加するのは、著作権法の研究者や、著作権に関係した会社または著作権に関係した公益社団法人であることがほとんどです。そのため、著作権法というと、どうしても一般の一個人には関係のないことに思えるかもしれません。

しかし、個々人の有している個性こそが文化の多様性を生み出す要因であり、文化の発展に寄与するものである以上、本来は個人こそがもっとも重要な存在であるといえます。私たちがふだんから行っている言動こそが、文化そのものであるということを忘れないようにしてください。私たちは生きる限り、つねに文化の担い手なのです。