1)「創作的に」の意義

著作物といえるためには、創作性が必要です。なぜなら、創作性のないものまで保護すると、他人が同様の作品を創作できなくなり、表現活動に支障を生じてしまうからです。

ただし、「創作的」といえるためには、個性がなんらかのかたちで発揮されていればたり、厳密な意味での独創性までは必要ありません(判例・通説)。なぜなら、どんなに前衛的な作品であっても、先人の文化的遺産を土台として完成するものである以上、厳密な意味で独創性が必要ということになってしまうと、著作物として保護される範囲が狭くなってしまうからです。

この要件により、他人の著作物の模倣品模写したものは著作物から除外されます。模倣品や模写したものには創作性がないからです。したがって、アニメやマンガのキャラクターを描いた場合、このできあがった絵は著作物ではありません。自分で描いたものであっても、たんに複製しただけで創作性がないからです。

よって、著作物でない以上、著作権を主張することはできません。 むしろ、いまのケースで著作権者の許諾を得ずにキャラクターを描いて発表していれば、後述する複製権を侵害していることになり、みずからが他人の著作権を侵害していることになります。

創作性のないものまで著作物としてしまうと、私たちの行動が大きく制約されてしまいます。たとえば、創作性がない「こんにちは」ということばを著作物と認めてしまうと、これを使おうとするたびに著作権者に許諾を求めることになり、表現活動どころか日常生活にさえ支障が出ます。そこで創作性の要件が必要なのです。

2)具体例

創作物の表現がごく短いものや、表現に制約があって、他の表現がおよそ想定できない場合や、表現が平凡で、ありふれたものである場合などには、筆者の個性が表れておらず、創作性は認められません(東京地判平成11.1.29「古文単語語呂合わせ」事件)。

たとえば、学問的研究によって到達した定義は思想であるものの、厳密に文言を選択したものであり、これと同じ思想に立つ限り同じような文言を採用せざるをえないでしょう。そのため、定義に創作性は認められません(東京地判平成6.4.25「日本の城の基礎知識」事件)。

また、絵画など平面的な作品を撮影した場合、「正面から撮影する以外に撮影位置を選択する余地がない以上」、その写真には創作性は認められません(東京地判平成10.11.30「版画写真」事件)。ただ、彫刻などの場合は平面的ではなく立体的な作品であるため、これを撮影した写真には創作性が認められる余地があります。

「ヨミウリ・オンライン記事見出し」事件(東京地判平成16.3.24)では、「いじめ苦?都内のマンションで中3男子が飛び降り自殺」「マナー知らず大学教授、マナー本海賊版作り販売」などの見出しが、ありふれた表現であるとして著作物性が否定されました。

「ラストメッセージ in 最終号」事件(東京地判平成7.12.18)では、雑誌の最終号に掲載された一部のあいさつ文について、休刊または廃刊の告知や、感謝の念、お詫びの表明、休廃刊後の再発行の予定の説明などをしているにすぎず、短文で、しかもありふれた言い回しであることを理由に著作物性を否定しました(他のあいさつ文については著作物性を肯定)。

他方で、「ボク安心ママの膝よりチャイルドシート」というスローガンにも創作性が認められた例があります(東京地判平成13.5.30「交通安全スローガン」事件)。これは、スローガンのように字数が少ないものでも創作性が認められる場合があるということであり、俳句川柳についても同様のことがいえます。