1)意義

法人などの業務に従事する者が職務上著作物を創作した場合、当該法人が著作者となります(15条1項)。これを職務著作といいます。

原則として、著作物を実際に創作した者が著作者になるのですが(創作主義3-1.参照)、この原則を貫徹すると、法人などの場合は内部の多数の者が著作者ないし共同著作者となってしまい、著作物の円滑な利用を阻害してしまいます。そこで、一定の要件を満たしている場合には法人などが著作者となることとしました。

なお、著作権法上の「法人」というためには法人格は不要であり、団体内部の規約に代表者または管理人の定めがあればたります(2条6項)。

通常は、法人内部の関係者が多くなるとだれが著作者か判別しにくくなりますし、判別できても権利を行使しにくくなりますから、他人が著作物を利用するさいに支障が出てしまいます。さらに、法人などの内部で職務上作成された著作物については、当該法人が責任を負うと考えるのが一般的です。そこで職務著作を認めたのです。

2)要件

  1. 法人、その他使用者の発意に基づいていること
  2. 法人等の業務に従事する者が職務上作成したものであること
  3. 法人等が自己の著作名義のもとに公表するものであること
  4. 作成時の契約や就業規則等に別段の定めがないこと

(1)法人、その他使用者の発意に基づいていること

法人などの発意とは、著作物の作成についての意思決定が使用者の判断によるものであることを意味します。職務上、従業者が自発的に著作物を作成した場合も、法人などの発意に含まれます。

(2)法人等の業務に従事する者が職務上作成したものであること

業務に従事する者というのは、使用者と作成者とのあいだに雇用関係があることをいいます。したがって、雇用関係のない外部の者が請負契約により著作物を作成しても、15条は適用されません。

ただし外部の者であっても、実質的にみて、法人などの内部において従業者として従事していると認められる場合は、15条が適用されます(東京地判平成10.10.29「SMAPインタビュー記事」事件)。プログラマーが外部から派遣されて法人などの業務に従事している場合も、具体的な指揮命令を派遣先から受けているならば同様です(作花・詳解187頁)。

職務上作成した」とは、勤務時間の内外を問わず、自己の職務として作成することをいいます(前掲・詳解187頁)。したがって、自宅で著作物を作成した場合も含まれます。

(3)法人等が自己の著作名義のもとに公表するものであること

あくまでも「公表するもの」という文言であり、「公表したもの」とはなっていないので、将来法人などの名義のもとに公表する場合も含まれます。

プログラムの著作物については、公表されずに内部で使用される場合も多いため、本要件を満たす必要はありません(15条2項)。

(4)作成時の契約や就業規則等に別段の定めがないこと

これは、契約や就業規則に「従業員を著作者とする」というような定めがないことを意味しています。