1)コピーレフト

コピーライト(著作権)という概念に対して、コピーレフトという概念が存在します。

(1)定義

コピーレフトとは、利用許諾(ライセンス)のうち、「公での引用、改変、内部情報と二次的著作物の再配布を抜け道なく可能にすることを目的とした概念」のことをいいます(ウィキペディア2007年11月2日の版より引用)。リチャード・ストールマンが提唱した概念です。

(2)趣旨

コピーレフトは、パブリックドメインの弱点を克服しつつ、著作物を広く利用させることで当該著作物の発展に寄与するとの考えのもとで誕生しました。

コピーレフトの概念は、以下の経緯をたどるとわかりやすいでしょう。
 あるところに、著作物の自由な利用を認めることで、著作物をより発展させることができると考える人がいました。彼は、さまざまな人が著作物を自由に利用することにより、それぞれの持ち味を活かしたすばらしい作品ができあがると考えたのです。そこでまず、彼は著作物の著作権を放棄し、パブリックドメインとしました。これで著作物は共有財産となり、だれもが自由利用できます。
 ところが、パブリックドメインとすると致命的な欠点が考えられます。というのも、他人が当該著作物を翻案することで二次的著作物ができあがるわけですが(2条1項11号)、二次的著作物の著作者の対応により、原著作物の著作者の理念が実現できなくなってしまうおそれがあるからです。
 たとえば、当該二次的著作物の著作者が、「自分が作ったものだから、だれにも改変されたくない」と考えていたとします。そうすると、彼の許諾が得られない以上、他人がこの二次的著作物を改変してだれかに利用させることはできなくなります(27条)。
 つまり、せっかく原著作物の著作者が「みんなに自分の作品を改変してもらいたい」と考えていたのに、二次的著作物が作出されることで、原著作者の考えが反故されることになってしまう可能性があるわけです。
 そこでコピーレフトという発想が生まれました。コピーレフトのもとでは、著作者はその著作物の利用者に対し、コピーや再配布、翻案を認めるライセンスを付与して明記しなければならないとし、他方、利用者も、当該著作物をコピー、翻案、再配布するときにこのライセンスを同様に適用し、明記しなければならないとしたのです。こうすることで、さきの弊害を解消しつつ、当初の理念を達成できるはずです。
 たとえば、Aさんが作詞してコピーレフトのもとに作品を発表し、Bさんが詩を修正したのちメロディを付して、コピーレフトのもとに作品を発表します。そしてCさんが編曲してさらに歌声を入れ、これをコピーレフトのもとに発表し、Dさんが楽曲をリミックスして…というように、コピーレフトのもとでは一定の要件を満たすことで、さまざまな人が著作物を自由に利用して伝播し、進化させることが可能になるわけです。
 しかも、著作者はいちいち個別に許諾を与える煩雑さから解放され、また著作物の利用者も、著作者の許諾を得る煩雑さから解放されるのです。
 こうしてコピーレフトの概念が誕生し、発展してきました。

2)ライセンスの種類

上の図は非コピーレフトのライセンスも含めて、さまざまなライセンスを表したものです。このなかからコピーレフトのライセンスについて、いくつか見てみましょう。

  • GPL
  • GFDL
  • CC

(1)GPL

ア 定義

GPL(GNU GPL)とは、リチャード・ストールマンによって設立されたフリーソフトウェア財団から配布されている、ソフトウェアに特化したライセンスのことです。

GPLは"GNU General Public License"の略称です。

イ 特徴
  • ソフトウェアを想定している
  • 派生的著作物(日本の著作権法でいう二次的著作物)にもライセンスが及ぶ
  • 有償によってソフトウェアを配布することができる
  • フリーないしオープンソース・ソフトウェア用として圧倒的な人気がある(ウィキペディア

(2)GFDL

ア 定義

GFDL(GNU FDL)とは、フリーソフトウェア財団から配布されている文書に特化したライセンスのことです。

GFDLは"GNU Free Documentation License "の略称です。

イ 特徴
  • 文書を想定している
  • 有償によって文書を配布することができる
  • 派生的著作物(日本の著作権法でいう二次的著作物)にもライセンスが及ぶ

ウィキペディアは、このGFDLに基づいて適法に改変されています(詳細)。ただ、GFDLはウィキペディアを想定して作られたライセンスではないので、ライセンス条項の読み替えが必要になる場合があります。
 また、ウキペディアに投稿される画像などは文書と別扱いであり、著作権者の判断によりGFDLのライセンスを付与するのか、あるいは画像の著作権を放棄してパブリックドメインとするのかを選択できます(詳細)。

ウ 要求

GFDLのもとライセンスされた著作物を配布や改変するなどして利用する者は、たとえば以下のこと守る必要があります。

  • GFDL下でライセンスすること
  • 改訂履歴をコピーしたうえで、自身の改訂情報を追加した改訂履歴を作成すること
  • GFDLの文書をコピーして、これを当該著作物に含めること

改訂履歴をコピーして作成する必要があるので、紙の媒体を使用して文書を複製または改変することは、事実上あまりないといってよいでしょう。
 この点、ウィキペディアではすべての改訂履歴が「版」として、自動的に作成されて保存されるので、GFDL下で文書の複製または改変が容易にできます。したがって、誤った情報が入り込んだ文書を訂正することも、また文書をより発展した優れたものにすることも、手続き的な煩雑さを要せずにできるわけです。

(3)CC

ア 定義

CCとは、"Creative Commons"の略称です(日本語版公式サイト)

イ 特徴
  • ソフトウェア以外の著作物を想定している
  • GFDLよりも緩やかな要件
  • ライセンス内容を選択できる

ここにアクセスし、質問に答えて「ライセンスを選ぶ」をクリックすると、ラインセンスができあがります。そして、画面に表示されているコードをウェブページにコピー&ペーストして公表すれば、ライセンスとしての効力が発生します。

ウ 要求

CCのライセンスのもとで作成された著作物を利用しようとする者は、著作者が選択したライセンス内容に従わなければなりません。

たとえば、著作者が非営利のライセンスを選択していた場合、当該著作物の利用者は営利目的でそれを使うことができないということです。