この要件により、原則として応用美術は著作物から除外されます。応用美術とは、主として実用品のことをさし、実用品の模倣を禁止する法律として意匠法があります。たとえば、日用雑貨や衣類、電化製品、自動車などは、著作物ではありません。
ただし、応用美術のうち、美術工芸品については例外的に、美術の著作物(10条1項4号)として著作権法により保護されます(2条2項)。
ここで、@美術工芸品は一品製作のものに限られるのか、またA美術工芸品以外の応用美術は、美術の著作物としてまったく保護されないのか、という争いがあります。具体的には、絵をプリントしたTシャツが純粋美術であるのか、それとも応用美術であるかにつき問題になります。
この点、判例は@の問題につき、美術工芸品は一品製作のものに限られず、量産品も含まれる場合があるとし(長崎地判昭和48.2.7「博多人形赤とんぼ」事件、神戸地判昭和54.7.9「仏壇彫刻」事件)、Aの問題につき、応用美術であってもそれが純粋美術と同視できる場合には、美術の著作物として保護されるとしました(同「仏壇彫刻」事件、東京地判昭和56.4.20「アメリカTシャツ」事件)。
応用美術に対する概念として純粋美術というものがあります。純粋美術というのは、絵画や彫刻などの、もっぱら鑑賞目的のために供される創作物をいいます。そして原則として、純粋美術は著作物として著作権法によって保護され、応用美術は意匠法によって保護されます。
しかし例外的に、応用美術のなかでも美術工芸品だけは、美術の著作物として著作権法でも保護されるのです(2条2項)。
では、絵をプリントしたTシャツは、純粋美術、応用美術のいずれでしょうか。プリントされた絵に着目すれば前者といえ、著作権法によって保護されますし、Tシャツとして日常生活で使われることに着目すれば後者といえ、意匠法によって保護されます。
まず、応用美術のうち美術工芸品は美術の著作物ですから、美術工芸品とそれ以外の応用美術とを区分するための基準が問題になります。そこで@が問題になるのです。また、応用美術といってもさまざまなものがあるわけで、美術工芸品だけを美術の著作物として保護して、それ以外の応用美術をまったく美術の著作物として保護しないとするのは、妥当といえるのかという観点から、Aが問題になるわけです。